過日、呉市の真福寺に珍しい光背を付けた仏像が安置されているとの話を聞き、早速4月中旬のよく晴れた日にそのお寺を訪れ、拝観させていただいた。(勿論、事前に了解を得た上である)
当日、庫裏にて来意を告げると、何処か別の所で仕事をしていたらしい住職が手を休め、自ら堂内を案内して下さいました、深謝。
真福寺(呉市川尻町久俊) 正式には実勝山月窓院真福寺と称する浄土宗のお寺である。往古は禅宗の寺であったと伝えられているが、天正3年(1575)の火災で開基、年代、由緒など失い詳細は不明とのことである。(参考:境内の説明書)
天正5年(1577)瀬戸田法然寺の法誉愚伝上人 が入寺、再興した。慶長6年(1601)慶誉念保上人 によって浄土宗に改宗された。尚、現在の本堂は明治42年(1909)の再建。(参考:境内の説明書)
阿弥陀如来立像(県重要文化財) 像高61cmの寄木造、室町時代の作。
切り込み螺髪で、眼は彫眼である。印相は右手掌を外に向けて胸に上げ、左手は掌を外に向けて垂らす阿弥陀九品印の中の上品下生の来迎印を結んでいる。納衣を通肩に着け蓮華座に立っている。
裙(裳)の折り返し部に若干翻波式衣文が見られるが、納衣の分厚い彫法などは室町時代のものか。
背にする光背は蓮弁形(舟形光背)で頭光、身光部を木彫とし、外周を金銅製としている。木彫部には金箔を施し、金銅部には蓮弁3箇所(3箇所に阿弥陀三尊の種子を各々付けている)を配し、宝相華唐草文を透かし彫りにしている立派な光背である。
都合により撮影は出来なかったが、同寺には上記の他に、県重要文化財の薬師三尊像(薬師如来立像、日光・月光の両菩薩)十二神将立像(12躯揃っている)他、貴重な文化財が安置されている。
尚、現在の真福寺の本尊は、阿弥陀如来坐像(明治期の作)で、上記の阿弥陀如来立像は、もと真福寺に安置されていた本尊である。