棲真寺・二十八部衆


 
 大和町平坂の人里離れた山中のお寺です。かねてから拝観したいと思っていた二十八部衆を拝観しました。拝観後、現在の棲真寺復興に係る経緯を児玉亮雲住職からお聞きすることが出来ました、その一端も併せ紹介します。

 中国自動車道本郷ICから県道33号を経由して、一段と緑を濃くした初夏の県道343号をひたすら北へと車を走らせる、343号を20分程走った所で三叉路を大きく左折し、新しく整備された道を更に進み、峠らしき所を下るとやがて棲真寺の看板がある、後は看板の案内通りに進んで棲真寺にたどり着いた。



                                  
棲真寺全景應海山棲真寺(せいしんじ)(三原市大和町平坂2033)臨済宗妙心寺派、本尊千手大悲観音立像。棲真寺縁起によれば、開基は承久元年(1219)源頼朝の家臣土肥実平の嫡男である遠平の夫人三回忌の追善供養のため実平がこの地に七堂伽藍を建立したとあり、これが棲真寺の創建とされている。弘安2年(1279)白雲恵暁禅師巡国中に棲真寺に錫を留め、住するに及び法灯は頓に輝き、寺運は更に栄えるに至った。この故に白雲恵暁禅師が開山とされている。
 その後、興亡盛衰を繰り返したが、ついには無住となり、伽藍はむなしく荒廃した。寛文2年(1662)江州の名僧仲芳禅師によって寺は再興された。仲芳禅師は中興の祖である。また棲真寺は現存する小早川家氏寺のうち最古のものと伝えられている。

 
児玉亮雲住職
児玉亮雲(こだまりょううん)現・住職(右の写真)の話によれば、先代の西亮天(にしりょうてん)住職は、元外国航路の乗組員だったが、歴史好きで休暇などを利用して各地の寺など訪れていた。偶々当寺を訪れたところ境内は荒れ放題で、住職も住んでいる様子がなかった。そこで地元の人たちの要請もあり、この寺を守っていこうと仏門に入ることを決意。山口市の寺で修行し、昭和63年(1988)住職となり、平成19年(2007)亡くなるまでの間に境内の整備は無論のこと本堂、庫裏、山門の再建、参道の整備などを行い、また、茅葺の古民家を移築整備して写経道場とした。これらの偉業が、先代の西亮天住職が平成の中興の祖とされる所以である。

 このように鎌倉前期の創建で由緒ある寺院が幾多の存亡を繰り返し平成の世になって再興されたことは稀有なことであり、偏に寺の再興にかける地元住民熱意と先代住職の並々ならぬ決意があって出来たことである。そして今は、現・住職の飾らぬ人柄と高い見識でそれを引き継ぎ、守られている。




二十八部衆 千手観音の眷属で東・西・南・北・上・下に各四部、北東・東南・北西・西南に各一部ずつ配され合計二十八部で千手観音を信仰する者を守護する護法神達のこと。「千手観音造次第法儀軌」では一部に複数の名前が入っていたりして必ずしも尊名が統一されていない。 (参考:フリ−百科事典「Wikipedia」)
                      
棲真寺二十八部衆(収蔵庫に安置)代表的な作例は京都・妙法院三十三間堂の二十八部衆が有名であるが、棲真寺にも二十八部衆の内の十三躯が収蔵庫に安置されている。
即ち、金毘羅王、散指大将(さんじたいしょう)密迹金剛力士(みっしゃくこんごうりきし)毘楼博叉天(びるばくしゃてん)満善(まんぜん)車王(しゃおう)、梵天、阿修羅、乾闥婆王(けんだつばおう)、帝釈天、金色孔雀王、迦楼羅王(かるらおう)摩醯首羅王(まけいしゅらおう)沙羯羅王(しゃがらおう)の十三躯である。
 
 これら13躯はいずれも像高50p前後であり、寄木造、玉眼、彩色像である。衣文の彫りは深く、力強い表現であり、後補の部分があるが、鎌倉時代の特徴を表している。慶派の流れを汲む仏師の作と思われる。尚、二十八部衆ではないが寺院伽藍の守護神と言われている韋駄天立像(十二天の一人)、源頼朝の側室妻木姫が着用したとされる打掛なども安置、保管されている。



金毘羅王
(こんぴらおう)

散指大将
(さんじたいしょう)

密迹金剛力士
(みっしゃくこんごうりきし)

毘楼博叉天
(びるばくしゃてん)

満善車王
(まんぜんしゃおう)

梵天
(ぼんてん)

阿修羅王
(あしゅらおう)

乾闥婆王
(けんだつばおう)

帝釈天
(たいしゃくてん)

金色孔雀王
(こんじきくじゃくおう)

迦楼羅王
(かるらおう)

摩醯首羅王
(まけいしゅらおう)

沙羯羅王
(しゃがらおう)



 尚、本尊の千手大悲観音立像は公開されていません、開帳は春と秋の各法要で開帳するとのことである。又、本堂の前庭から一段下がった所には地元の人々によって整備された蓮田が広がっており、6月末〜7月上旬にかけて見事な開花が楽しめることでしょう。

写真撮影と当ペ−ジへの掲載を快諾いただいた児玉住職に感謝しつつ寺を後にした。


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