越中五箇山・菅沼集落


 富山県と岐阜県の県境、白川郷・五箇山の合掌造り集落の一つである菅沼集落は地区を流れる庄川の流域に位置し、全戸数12棟の内9棟が合掌造りの家屋で、背後は急斜面の山地が迫る白川郷・五箇山集落の中でもっとも小さい集落である。
沼集落の合掌造り家屋は、江戸時代中期以降に建てられ、一番新しい家屋は大正時代のものと言われている。(現地ガイドより)

江戸時代以降は、和紙、養蚕、煙硝(鉄砲火薬の原料、加賀藩にしてみれば、山深い秘境は煙硝を秘密裏に製造するには好都合であったであろう)が主な産品であったが、煙硝については明治中期に入り安価なチリ硝石が輸入されるようになり、次第に五箇山地区における煙硝の製造は衰えたとのこと。
菅沼集落の合掌造りの特徴は、・切妻造の屋根の勾配が白川郷などに比べて若干急勾配である(同じ豪雪地帯でも、五箇山地区の降雪は水分が多く、少しでも早く滑り落ちるように配慮されている由)、さらに一番の特徴は、「妻入り」(入口が妻側に設けられている)であること、これは五箇山地区では菅沼集落だけであるとのこと。(筆者は2012年10月に白川郷を訪れたがすべて「平入」であった。)
世界遺産菅沼集落のモニュメント

銘板には、次の通り記されている。
「白川郷・五箇山の合掌造り集落は1995年12月、ユネスコの「世界の文化及び自然遺産保護に関する条約」に基づく世界遺産リストに登録されました。~略~。
 菅沼集落は9棟の合掌造り家屋と3棟の非合掌家屋、土蔵、板蔵、それをとりまく水田、耕作地、社叢などが保存すべきものとして特定されており小規模ながらも歴史的集落としての真正性
(本物であること。主に建造物や遺跡などの文化遺産が持つ本物の歴史的、芸術的な価値のこと)がよく保存されている集落です。~略~。

と和文と英文で記されていた。
モニュメントの外周に施された「ササラ」(五箇山地方を代表する古代民謡「こきりこ節」を謡い踊る際に用いる民族楽器で、数十枚の木片が打ち合う際にでる独特の音が魅力的な楽器)のオブジェ。(参考:Wikipedia)
五箇山の秘境に佇む僅か9戸の合掌造り、訪れた日は生憎の雨であったが、迫りくる濡れた山肌、濡れそぼった周辺の樹叢と急勾配の茅葺屋根から滴るしずくが印象的な景色であった。3年前に訪れた白川郷よりも、小さな世界遺産・菅沼集落9戸の合掌造りの方が原風景を残しているように思えた。(161105)




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