可部 九品寺・地蔵菩薩立像
可部・南原に珍しい板張寄木造の地蔵尊が祀られていると聞いており、かねてより拝観したいと思っていたが、 5月の清々しい空の下、Kさんの案内で南原・九品寺の地蔵堂を訪れた。
九品寺は、現在地名になっているが、地蔵堂前にある説明板によれば、九品寺は福王寺の末寺であり、相当な大寺であったが、現在は地蔵堂を残すのみであるとのこと。
当地蔵堂に安置されている地蔵菩薩立像は、像高173pで江戸初期の制作である。
また、説明板によれば本像の制作技法は、「板張り寄木造り」なるもので珍しい技法とのことである。(体躯を薄材、細材で矧付した寄木か?)寄木造は実に様々な手法があるが、本像のような「板張り寄木造」の名称はあまり聞いたことがない。具体的にどのような手法であるか興味深い。
像容は、右手に錫杖、左手に宝珠を持つ一般的な地像菩薩立像である。目は玉眼のように見えるが、よく見ると彫目のようである、首に三道を表し、煌びやかな胸飾、瓔珞を付け蓮華座に立つ。
尚、地蔵菩薩が収められている厨子の扉に十六弁の菊紋が刻まれている。これは明治2年(1869)太政官布告で、寺社に使用されていた菊紋は、一部の寺社を除き一切の使用が禁止された。しかし、その後、明治12年(1879)の太政官通達で、一般の寺社でも仏堂、神殿の装飾用として使用することが許されている。
(参考:Wikipedia)
地蔵堂は、付近の住民の方々によって管理されているとのことであるが、非常に状態良く管理されていて、文化財に対する意識の高さが思われた。
地蔵堂を出て、Kさんの紹介で近くの民家を訪れた。古い絵図が有るという、家の人が気軽に倉庫から2箱の掛け軸箱を持ち出して来られた。 見せていただくと、一つには絹本着色地獄変相図、他方には絹本着色極楽変相図が収納されていた。2幅とも色鮮やかで損傷も無く保存状態が大変良好であった。箱蓋の裏書きを見ると、「寛政改元酉秋(1789)・京都東洞院四条上ル・佛繪師望月平兵衛」とある。
特に文化財指定ではないようであるが、先の地蔵堂と同様に文化財に対する意識の高さが窺えた。
(※)変相図…仏教絵画の一つで、浄土や地獄の様子を絵画的に描いたもの。
(参考:Wikipedia)
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